おはこんばんにちは、チャチャです😺
この夏、なんとスタジオジブリの隠れた名作『海がきこえる』が期間限定リバイバル上映中!チャチャも劇場に馳せ参じて、大スクリーンで見る里伽子の涙と拓の葛藤に完全ノックアウトされてきました。72分という短尺ながら、青春の甘酸っぱさと苦さを同時に叩きつけてくる問題作。金曜ロードショーには永久出禁状態だけど、それもそのはず!未成年飲酒にお金の貸し借り、すぐ手が出ちゃうし、もはやアメリカンハイスクール映画の日本版。ファッションセンスも良い。でもこれこそが本当の青春なんだよね!
ポップコーン🍿とセブンアップ🥤の準備はいいかい??
ネタバレ全開レビュー、愛情と皮肉たっぷりでいきましょう!
他の映画レビューも気になる方は、こちらからどうぞ!
▶ 映画部屋カテゴリー
▶このシリーズのnoteマガジンはこちら👇
観たら語らずにいられない!チャチャの映画部屋
基本情報
- 原題: Ocean Waves
- 邦題: 海がきこえる
- 公開年: 1993年
- 上映時間: 72分
- 監督: 望月智充
- 脚本: 中村香
- 主演: 飛田展男(杜崎拓)、坂本洋子(武藤里伽子)、関俊彦(松野豊)
あらすじ(ネタバレ軽め)
大学生になった杜崎拓は、吉祥寺駅のホームで高校時代の同級生に似た女性を見かける。同窓会のために故郷の高知に帰省する飛行機の中で、拓は高校2年の夏に東京から転校してきた武藤里伽子との思い出を振り返る。親友の松野豊も含めた三角関係、修学旅行でのハワイでの出来事、そして卒業まで続いた複雑な人間関係。青春の美しさと残酷さを同時に描いた、ジブリ史上最もリアルな恋愛ドラマ。
ストーリー全開(ネタバレあり)
前半
高知の県立高校2年生の杜崎拓は、親友の松野豊と平穏な学生生活を送っていた。そこに東京から武藤里伽子が転校してくる。両親の離婚により、母親と共に母の実家がある高知に戻ってきたのだ。しかし里伽子は東京にいる実父への理想的なイメージを抱き続けており、いつか父のもとに戻りたいと強く願っていた。松野は里伽子に興味を示すが、拓は最初はそれほど関心を示さない。しかし修学旅行先のハワイで、里伽子から突然「お金貸してくれない?」と頼まれる。里伽子は「お金を無くした」と嘘をつき、拓から6万円を借りることに。実は彼女はそのお金で東京の父に会いに行く計画を立てていたのだ。母親に相談しても許可されないであろうことを知っていた里伽子は、この方法しかないと考えていた。この出来事をきっかけに、拓の里伽子への想いが芽生え始める。
中盤
高校3年になり、拓と里伽子は同じクラスに配属される。松野は別のクラスとなり、微妙な距離感が生まれる。ゴールデンウィークに里伽子が東京の実父に会いに行くことになり、拓が同行することに。しかし東京で待っていたのは、実父の新しい家族という現実だった。里伽子は深く傷つき、拓はそんな彼女を支えようとする。一方、松野は拓が里伽子に振り回されることを心配し始める。里伽子は学校でも他の女子生徒たちから浮いた存在で、特に彼女の東京への憧れや態度が反感を買っていた。この頃から拓と松野の友情にも微妙な亀裂が生じ始める。
後半
文化祭の準備期間中、里伽子が他の女子生徒たちから吊るし上げにあう事件が発生する。彼女の東京への憧れや傲慢な態度が問題視され、クラスメートたちが彼女を責め立てる。拓はその場にいながら里伽子を助けることができず、ただ立ち尽くしてしまう。後で松野から「なぜ止めなかったのか」と責められ、感情的になった松野に殴られてしまう。この事件をきっかけに拓と松野は卒業まで口をきかない状態が続く。里伽子も心を閉ざし、拓との距離を置くようになる。そして卒業を迎え、それぞれが別々の道を歩むことになる。数年後、同窓会の帰りに偶然吉祥寺駅で再会した拓と里伽子が微笑み合うシーンで物語は終わる。
キャスト紹介
杜崎拓(声:飛田展男)
高知の高校生で本作の主人公。純粋で優しい性格だが、肝心な時に行動できない面も持つ。
飛田さんといえば『機動戦士Zガンダム』のカミーユ!ガンダムパイロットから高校生まで演じ分ける名人です。
武藤里伽子(声:坂本洋子)
東京から転校してきたヒロイン。美しく聡明だが、家庭の事情で心に深い傷を抱えている。
坂本洋子さんの透明感ある声が里伽子の複雑な心境を完璧に表現。この役のために生まれてきた声優さんです。
松野豊(声:関俊彦)
拓の親友で、里伽子に最初に興味を示す。面倒見が良いが、嫉妬深い一面も。
関俊彦さんのイケボ炸裂!でも友達を殴るのはダメよ〜。『北斗の拳』のラオウの声でもあります。
思うままのレビュー
これぞリアル青春!美化なしのガチンコ勝負
みなさん、青春映画といえば何を想像します?爽やかな恋愛、美しい友情、感動的な成長…そんなお花畑を期待してたら大間違い!この作品は青春の醜い部分も容赦なく描いてるんです。未成年飲酒、友達同士の暴力、嫉妬による人間関係の破綻…まさにアメリカンハイスクール映画の日本版。でもこれが本当の青春なんですよね。感情がぐちゃぐちゃで、自分でも何がしたいか分からない。大人になりきれない子供の等身大の姿がそこにある。ジブリがここまでリアルに描くとは思わなかった!トトロやキキとは別世界の問題作です。
里伽子というキャラクターの複雑さが半端ない
里伽子、この子はマジで複雑なキャラクターです。最初に拓に話しかける言葉が「お金貸してくれない?」って、普通ならドン引きでしょ?でも彼女の家庭環境を知ると、その行動も理解できるんです。母親の再婚で振り回され、実父への複雑な感情を抱え、居場所を求めてもがいている。美しく聡明でありながら、時として自分勝手で傲慢な面も見せる。完璧じゃない、人間臭いキャラクターがこの作品の最大の魅力。他のジブリ作品にこんなリアルな女子高生いませんって!坂本洋子さんの声の演技も素晴らしく、里伽子の内面の葛藤が伝わってきます。
拓の包容力と男前っぷりに完全ノックアウト
杜崎拓、この男の包容力ときたら反則級でしょ!自分の考えを持ちつつも、納得出来ない事には戦いもするし、ハワイへの修学旅行費を自前で稼ぐ行動力もハンパない。親友の松野が転校生に惚れたと聞いて「お前の良さが女にわかるものか」と内心吐露するような繊細さも持ち合わせてる。同級生に助けを求められてタクシーで空港まで行く優しさと、怒り心頭の相手にも関わらず、困っていた事が分かると東京泊3日に同行する男気!
そして何より、拓の90年代ファッションセンスが最高すぎる!あのカジュアルなシャツにパンツのコーディネート、さりげなく決まってるのが本当に格好いい。90年代という時代背景を活かした自然体のおしゃれさが、彼の内面の魅力をさらに引き立ててるんです。ファッションで着飾るんじゃなく、自分らしさを表現してる感じが男前度を倍増させてる!
そして何より心に刺さるのが、拓の里伽子への想いが込められた名セリフ!「里伽子はまるで30分で一気に大人になったみたいだった」って、これ思いとか恋とかしてないと絶対に出てこない言葉ですよね!この一言に拓の里伽子への深い愛情と、彼女の成長を見守る優しい眼差しが全て込められてる。単なる憧れや好意じゃなく、一人の人間として里伽子を理解しようとする拓の心の美しさが表現された、この映画最高の名言だと思います。こんな詩的で深い言葉を自然に言える高校生男子、チャチャも完全にノックアウトです!
あのエンディングは希望か諦めか、永遠の謎
ラストの吉祥寺駅での再会シーン。大人になった二人が微笑み合って終わるんですが、これが希望なのか諦めなのか分からないのが絶妙なんです。時間が経って、お互い成長した。でも高校時代の想いはどうなったの?結ばれるの?それとも美しい思い出のまま終わるの?この曖昧さが逆にリアルで、大人の恋愛の複雑さを表現してる。ハッピーエンドを期待してた人は肩透かしを食らうかもしれないけど、これが人生の現実。全てがきれいに解決するわけじゃない。でもあの微笑みには、お互いへの理解と許しがあったような気がします。
主題歌「海になれたら」の美しさに涙腺崩壊
坂本洋子さんが歌う主題歌「海になれたら」、これがもう反則級の美しさなんです!里伽子役の声優さん自身が歌ってることで、キャラクターと歌声が完全にシンクロしてる。歌詞も作品の内容とリンクしてて、「海になれたら きっと会えるだろう」の部分は毎回泣かされます。エンディングで流れる瞬間、映画の余韻と相まって心に響きまくり。ジブリの楽曲の中でも屈指の名曲だと思うんですが、なぜかあまり知られてないのが残念すぎる!
小ネタ & 裏話ピックアップ!
ジブリ史上最も異色の作品ポジション
『海がきこえる』はスタジオジブリ初のテレビスペシャル作品として制作されました。宮崎駿・高畑勲両監督は一切関与せず、完全に若手スタッフによる挑戦作。これがジブリ作品の中でも特別な立ち位置にある理由です。
72分という絶妙すぎる上映時間の謎
なぜ72分なのか?実はテレビの90分枠に合わせて制作されたため。しかし映画館での上映には短すぎ、2時間番組には中途半端という悩ましい長さに。現在のリバイバル上映でようやく単独上映が実現しています。
金曜ロードショー出禁の本当の理由
未成年飲酒シーンがあることも理由の一つですが、最大の要因は上映時間。2時間枠で放送するには短すぎて番組構成が困難。2011年に『ゲド戦記』との2本立てで一度だけ放送されたのが唯一の例外です。
原作は氷室冴子の青春小説
人気作家・氷室冴子の同名小説が原作。小説版では大学生編の描写が多く、津村知沙などアニメには登場しないキャラクターも多数存在します。アニメ化に際しては大幅な再構成が行われました。
16:9画面比率へのこだわり
当時のテレビは4:3が標準でしたが、将来の映画館上映を見据えて16:9で制作。現在のリバイバル上映でも映像が古びて見えないのはこの先見の明のおかげです。
主題歌「海になれたら」のGRe4N BOYZカバーが神すぎる
スタジオジブリトリビュートアルバム「ジブリをうたう」で、GRe4N BOYZが「海になれたら」をカバー。オリジナルの透明感を保ちつつ、現代的なアレンジで新たな魅力を引き出した名カバー。原曲の美しさを再認識させてくれる素晴らしい仕上がりです。
現在密かなブーム到来中
SNSを通じて若い世代にも再発見され、2023年には新装版文庫とビジュアルコレクション本が発売。30年の時を経て新たなファン層を獲得しています。
撮影裏&キャスト秘話
里伽子役キャスティングの難航
里伽子の複雑な心情を表現できる声優探しは困難を極めました。最終的に坂本洋子さんに決定した時は制作陣も大満足。彼女の透明感ある声が里伽子の儚さを完璧に表現しています。
若手監督・望月智充の挑戦
当時32歳だった望月監督にとって初の長編演出作品。ジブリの重鎮たちのプレッシャーの中、リアルな青春ドラマを作り上げる挑戦でした。結果的にジブリ史上最も人間臭い作品が誕生しました。
白フレーム演出の真の意図と技術的革新性
最も印象的な演出の一つが、シーンチェンジ時に現れる写真のような白いフレーム。望月監督は「現在の拓と過去の回想を行き来するとわかりにくいので、目印として入れた」と説明しています。しかしこの演出は単なる時系列の整理以上の意味を持っていました。白フレームは「まるで写真アルバムのようにひとつ白い空間に収められた視覚的な演出」として機能し、時間的移行と空間的移行を同期させる革新的な手法だったのです。実際にアニメーション業界からも注目され、後に多くの作品でオマージュされる演出技法となりました。
FIX(固定)カメラへの究極のこだわり
『海がきこえる』はラストシーンまで全てカメラが固定という驚異的な演出方針を貫いています。業界関係者の黒柳トシマサ監督は「一枚、一枚のレイアウトに対して『この絵なら画面が保つ』というよほどの自信がないとできない」と絶賛。白フレーム演出も、このFIX縛りの中で画面に変化をつける工夫の一つだったのです。最後のカメラが回るシーンを印象的に見せるため、それまで一切カメラを動かさない演出家としての究極の覚悟でした。
プロデューサー鈴木敏夫の苦労話
鈴木敏夫プロデューサーは後に「予算回収が最も困難だったジブリ作品」と語っています。テレビスペシャルという特殊な立ち位置ゆえの商業的困難さを物語るエピソードです。
音響へのこだわりが半端ない
海の音や波のSEにはとことんこだわり、劇場の大型スピーカーでの再生を前提にミキシング。現在のリバイバル上映でその効果を体感できるのは制作陣の先見性のおかげです。
キャラクター作画の繊細さ
特に里伽子の表情の変化には異常なほどの繊細さが込められています。一瞬の表情で感情を表現する技術は、ジブリのアニメーター陣の技術力の高さを物語っています。
16:9画面比率への先見の明
高橋プロデューサーの「映画として作ろう」という提案で、当時のテレビ標準4:3ではなく16:9で制作。望月監督は「あれが4:3でしか残っていなかったとしたら、ゾッとします」と振り返っています。この判断が現在のリバイバル上映を可能にしました。
まとめ/総括
『海がきこえる』、改めて見直すとこの作品の異色さが際立ちますね!他のジブリ作品のような魔法もファンタジーもなし、代わりにあるのは容赦ないリアリティ。未成年飲酒に友達同士の殴り合い、複雑な三角関係と、令和の今なら確実にPTAから苦情殺到案件。でもこれこそが本当の青春なんです!綺麗事じゃない、感情がぐちゃぐちゃで、大人になりきれない子供たちの等身大の姿。里伽子の複雑さ、拓の包容力と男らしさ…全部がリアルすぎて胸が痛くなる。72分という短い時間の中に、青春の甘酸っぱさと苦さを詰め込んだ傑作です。金曜ロードショーには出禁でも、映画館のリバイバル上映で体験する価値は絶対にあります。アメリカンハイスクール映画も真っ青の問題作ぶりを、ぜひ大スクリーンで!
総合評価
リアリティ: ★★★★★
ジブリ史上最もリアルな青春描写。美化なしのガチンコ勝負で容赦なし!
キャラクター: ★★★★★
里伽子の複雑さと拓の包容力が完璧。人間臭いキャラクターの宝庫!
ストーリー: ★★★★☆
派手さはないけど心に刺さる繊細な心情描写。72分に凝縮された青春ドラマ。
音楽・演出: ★★★★★
主題歌の美しさと望月監督の丁寧な演出が光る。海の音効果もリアル!
独自性: ★★★★★
他のジブリ作品とは完全に別次元。オンリーワンの問題作!
総合評価: ★★★★☆
ジブリの隠れた名作にして最大の問題児。万人受けはしないけど、刺さる人には絶対刺さる。青春の甘酸っぱさと苦さを同時に味わえる貴重な72分。リバイバル上映を見逃すな!
▶このシリーズのnoteマガジンはこちら👇
観たら語らずにいられない!チャチャの映画部屋
他の映画レビューも気になる方は、こちらからどうぞ!
▶ 映画部屋カテゴリー
コメント